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　中山道旅を京都側から始め、そろそろ美濃路を過ぎようという状態のため、交通手段をまじめに考えなければならなくなってきている。前回までは、各務原の新加納基点だったため、何のためらいも無く、常識的に新幹線を用いていたが、そこから３日かけて瑞浪の山中を抜け「恵那（大井）」までやってきたものだから、「いよいよ中央本線か」と思ったのも当然である。そう思っていた、思いたい。なのに何故? そんな話題である。

　ずっと太平洋沿岸地域に暮らして、ほとんど仕事の生活範囲も太平洋沿岸に閉じていると、新幹線という当たり前の乗り物が、どんなに便利であるかを忘れてしまうことがある。
　ちょいと軽い旅をする場合に、日帰りで名古屋方面に出かけようと思ったら、最寄の駅である新横浜駅では、午前6時16分には、もう名古屋方面行きの　のぞみ１号に乗ることができる。もちろん、この列車に乗るために乗り継ぐ近郊列車だって当然のように走っている。5時40分の電車に乗れば余裕で到着する。そして、この「のぞみ１号」に乗りさえすれば、7時38分には、名古屋に到着してしまう。
　極端な話、名古屋の会社に定時出社することだって、充分可能だ。8時の会議にだって間に合ってしまう。また「のぞみ１号」に遅れたって問題ない。次から次に、10分おきにやってくる。
　帰りだって気にしない。午後10時10分の「のぞみ156号」に乗りさえすれば、タクシーを使わずに自宅まで帰れる。つまり、名古屋に最大14時間32分も滞在しながら、“日帰り”ができてしまうのだ。

　こんな生活が当たり前だと思っていた。

　ところが…　恵那・中津川あたりへのアクセスを検索すると、どうしても中央本線が登場せず、名古屋から回れ、との結果ばかりが出てくる。明らかに遠回りだと思うのだが、どうしてそんなに新幹線に乗らせようとするのか。中央本線の時刻表を見て愕然とした。

　まず、中津川に塩尻から通しで乗れる列車の最初の物は、普通6:54塩尻発だが、これは次の「しなの２号」7:16塩尻発に木曽福島あたりで抜かれる。というわけで、最も早く恵那に到着できるのは、しなの２号で、8:31着、ということになる。
　まあまあの時間だ。文句は無い。ところが、この 7:16塩尻発に乗るためには、前日の20:38に武蔵中原を出て、立川で、21:24発の あずさ３５号 に乗るしか手段が無いのだ。これが 23:45 に塩尻着だから７時間半ほど駅で待つことになる。寒い。
　それでは、朝一番に塩尻に向かうとどうなるかを考えてみると、自宅最寄駅4:43発で、各駅停車を乗り継いで（４本）塩尻に行くのが最も早く、8:51着となる。スーパーあずさ１号を用いると、各駅停車よりも遅く、9:29着が最も早い。なんのこっちゃ?
　とりあえず、各駅停車を頑張って乗り継ぐと、9:10塩尻発の しなの４号に乗れそうだ。すると、中津川からのセントラルライナー４号へ乗り換えて、恵那には10:26着となる。

　自宅最寄駅から考えて、５時間４３分で到着である。

　それじゃあ、ってんで、通しで検索かけてみると、最速は、5:40武蔵中原発で、東海道新幹線経由、恵那到着8:40となる。わずかに３時間ジャスト。１時間も遅く出発して、１時間半以上も早く到着する。ちなみに、塩尻経由に比べて、名古屋経由の方が距離は100キロ遠回りになる。

　これはさすがに新幹線利用を考えるなぁ。とてもじゃないが無駄に時間を掛けたくない。なんて不便な、と文句も言いたくなったが、考えてみれば、廻り道をしてさえも速い方法が提供されているのだから、JRにとって何ら文句を言われる筋合いは無い。それでは塩尻の人々が不利なのかと言うと、それも間違いで、塩尻の人たちは朝7時過ぎに出れば、名古屋に9時16分には到着するのだ。（あと１時間早いのが欲しい気もするが）特に問題とするほど不便なわけではない。単に、塩尻を経由して東京方面から名古屋方面に向かうなんてことはしない方がいいよ、という話であるだけだ。

　それでは、その境界線はどこにあるのだろうか。武蔵中原→中央線沿線　という経路限定で名古屋回り、塩尻回り　で対決してみよう。
 

到達点	名古屋（新幹線）経由			塩尻（中央本線）経由
恵那	08：40	11840円	のぞみ１号・しなの３号	10：26	約7300円	しなの４号
美乃坂本	09：15	11430円	のぞみ41号	10：21	約7300円	しなの４号
中津川	08：48	12160円	のぞみ１号・しなの３号	10：12	約6600円	しなの４号
落合川	10：19	11430円	※１　のぞみ8１号	12：28	約5200円	※２　しなの４〜８号
坂下	10：24	11640円	※１　のぞみ8１号	12：22	約5200円	※２　しなの４〜８号
田立	10：27	11640円	※１　のぞみ8１号	12：19	約5200円	※２　しなの４〜８号
南木曽	10：33	11640円	※１　のぞみ8１号	12：14	約5200円	※２　しなの４〜８号
十二兼	10：38	11640円	※１　のぞみ8１号	12：09	約5200円	※２　しなの４〜８号
野尻	10：43	11640円	※１　のぞみ8１号	12：01	約5200円	※２　しなの４〜８号
木曽福島	09：22	13200円	のぞみ１号・しなの３号	09：38	約5300円	しなの４号

※１ 10：16中津川発まで各停が無い。そのため「しなの３号」に乗る必要が無い
※２ 11：31木曽福島まで各停が無い。そのため「しなの６号・８号」でも間に合う

　結果は御覧のとおり悲惨なもので、中津川から塩尻に近寄れば中央線有利と思いきや、決してそんなことはなく、中津川以北の各駅停車なんてほとんど走っていないから、やはり２時間遅れでしか到達できないのであった。木曽福島になると、特急停車えきなので、名古屋経由がまた一段と速くなり、逆に上り線も特急利用と思ったものの、やはりわずかの差で名古屋経由に負けるのである。

結局、塩尻到着までは、急ぐなら名古屋経由、ということか。そうしないと“夜明け前”に家を出ても到着は昼過ぎということになってしまう。木曽路恐るべし。

　さらに変な検索結果が出た。木曽福島の場合、上野駅から新幹線あさま501号に乗れと。すると長野発08:11のしなの４号に乗れるから、塩尻経由と同じ結果で9:38に着とのことである。この方が、自宅を出るのが40分遅くても良い。
　しかし、木曽福島に行くのに、何で名古屋に行ったり、長野に行ったり、遠回りせねばならんのだ。

なんともはや、トホホの世界。