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　昨年、何気なく始めた一人歩きだが、いざ始めてみると、単に「歩く」という行為だけだと思っていたのが、いろいろと派生して、非常に面白い世界に入って行けた。人一倍好奇心が旺盛ということもあるのだが、「健康のため」だった「歩く」という行動から、「東海道」という歴史的意味、そこで生まれた「浮世絵」の最高峰としての「広重五十三次」、過去の宿場街から、現代の都市への変貌を調べて行くうちに、鉄道、国道1号線の歴史、などなど。話題はつきない。

　私はこのように、広く浅く、をモットーとして、いろいろな角度から「東海道」というキーワードで遊んでいるのだが、中には、広重五十三次を綿密に調査している方々もいらっしゃる。徒歩の記録を詳細に取って楽しんでいる方がたもいらっしゃる。健康のため、「歩くこと」にのみ重点を置いている方も、全旧街道を走破することを目的にされている方、様々である。

　しかし、ふと気付いたのが、共通点として、ほとんどが男性なのである。女性が全くいないわけでは無いのだが、グループの中の一員だったり、あるいは定年後の第二の人生を夫婦で、というのがちらほら見かけるだけで、女性のみのグループとか、女性一人旅は、全く無い。ほとんどの方々が、家庭を持っている方がこっそり一人で、というパタンなのである。あるいは体力勝負の男子学生達か。何故だろう。

　関所を調べているとき、年間数百万人が通過しているような、旅が一般化していた時代ですら、女性は一日平均一人しか通過しなかった、という資料を読んで愕然とした。確かに、当時は「入り鉄砲、出女」のチェックが厳しく、とても気楽な旅で、女性が行き来できる状態ではなかったのだろう。しかし、そんな制度なんか、とっくに廃止されてもなお、女性は関所を通過しないものらしい。

　しかし、いざ、箱根の関所を訪れると、女性客で賑わう。

　決して、女性が旅行嫌いなわけではない。
　それほど多くの女性を知っているわけではないが、女性の旅（旅行）は、目的地があって、目的地を楽しむ傾向があり、男性は、一般的には同じなのだが、旅の過程を楽しむ、という人々が比較的多いと感じたことがある。バイク（自転車）のツーリングなど、その部類であろう。別に目的地は最大の楽しみではなく、その過程が楽しい。これが、女性には理解できないらしいのだ。「バイクに乗りたきゃ、北海道まで飛行機で行って借りればいいじゃん」なのだ。
　こういう、旅の過程を楽しめない人には、「東海道を歩く」なんて楽しさは、きっと一生理解できないのであろう。

　海外旅行が、女性客が多いのも納得できる。いわゆるパックの海外旅行に、過程を楽しむ箇所など無いからだ。私なら、同じ海外旅行、例えばヨーロッパへ行くなら、シベリア鉄道を使ってみたいし、オリエント急行というのも興味がある。できることならシルクロードも通ってみたい。アメリカ大陸なら、西海岸から東海岸までドライブしたい。太平洋横断の船旅もいい。しかし、悲しいかな、こういう旅は、時間もかかり、より高価となるため、一般的なツアーには無い。

　そう考えて行くと、私は（無論、好きか嫌いかで分ければ好きなのだが）歩くことが好きなわけではなく、旅の過程を楽しむ方法として、「徒歩」を選んだのだと思う。学生時代から「旅行」より「旅」が好きだった。どう違うかというと「過程を楽しむ旅行」が、私の定義する「旅」である。
　高校から大学入りたての頃は主に電車で全国を回り、バイトして中古の自動車を手に入れると、もう水を得た魚のように、暇を作っては全国を走りまわった。沖縄を除く、全都道府県を走った。そのボロ車は、結局中古で入手してから８年間乗り続け、走行距離は２０万キロを越えた。その間にも、バイトでトラックを運転し、東名名神、北陸、中央、名阪を縦横無尽に走り回っていた。学生時代だけで、運転距離は、４０万キロを越えていたと思う。
　バイトを除いて旅だけを考えても、１０数万キロ走っているわけだから、ほとんど日本国内はどこでも行ったことがある、と思っている。
　しかし、「どこへ行ったの」と聞かれると、「国道１９号から１８号を経て、８号に抜けて７号を北上して北海道に行った」とか、２１号線から８号、１号、そして２号、３号を全線走って鹿児島へ行った」などと、何処へ行ったか、より、どうやって行ったかを鮮明に覚えている。過程を楽しんでいたのだ。通ったことが無い国道があるのが悔しくて、国道１号線から、国道４００番台後半（記憶が定かでない）まで、ほとんど制覇した。地図を塗りつぶしたりもした。

　しかし、社会人となりそれほど時間が取れなくなると、目的のある旅行しかできなくなり、欲求不満がたまっていた。また、無茶な行程から自動車事故を起こしてしまい、賠償、恐喝、など様々な経験をしているうち、運転で旅をするのが億劫になってしまっていた。そこで手に入れた楽しみが「徒歩の旅」だった。

　東海道を歩いていることに、興味を示す女性は居るのだが、絶対に誰も参加したいとは言わない。「面白そう」と口では言うが、彼女らは内心「馬鹿じゃないの？」と思っているのだ。

　ふん、男のロマン、わかってたまるか :-)

※いえ、別に何か嫌なことがあったわけではありません。念のため。