24

　タイトルの「25」という数字にピンと来た方は、余程の東海道通である。しかも一里塚マニアと言えよう。せっかくだから、コラムの通し番号25で紹介したかったのだが、時間の関係から24番目の紹介となってしまった。25番を欠番にしようかと思っていたりする。

　さて、25の謎とは何かというと「日本橋から25番目の一里塚の謎」のことである。実は、恥ずかしながら私はまだ歩いていない範囲なのだが、25番目（25里目）の一里塚というものが存在しない。どの文献を見ても載っていないし、歩いた方々の記録を見ても、24番目の次が26番目となっている。以前から、一里塚に興味を持って調べていたのだが、どうしても25番が見付からなかった。そこで、今回は、存在しない25番の一里塚について考察してみる。

　まず、25里目の一里塚の位置であるが、当然、24番目と26番目の中間のはずである。24番目の一里塚とは、元箱根杉並木にある「葭原久保一里塚」である。それでは26番目はと言うと箱根峠の先、接待茶屋付近にある「山中一里塚」である。この間の距離を測ると、4.5km程しか無い。一里よりは少し遠いが、二里には絶対的に足りない。とても間に25里目の一里塚があるとは思えない。

　そもそも、一里塚の場所は、正しく日本橋から計測されているのか、という疑問が生じた。別件で、各宿場町間の距離を元に、日本橋からの累計距離を集計した資料を作ったので、その表に一里塚を書き加えた表を作成した。
　各宿場間の距離は、参考資料(1)の「今昔東海道独案内（今井金吾）」と、参考文献(6)(7)「広重五十三次（上下）」による。いずれも元としている資料は、「新板東海道分間絵図」であると思われる。しかし、これらの文献には、累積距離が無いため、日本橋からの距離を独自に算出した。この表のうち、関連する小田原−三島間のみを抜粋して、以下に示す。
 

番号	宿場名	累積距離	一里塚
9	小田原	二十　里二十七町	.
｜	-	-	(21)風祭一里塚 (22)湯本茶屋村一里塚 (23)畑宿一里塚 (24)葭原久保一里塚
10	箱根	二十四里三十五町	.
｜	-	-	(25) (26)箱根接待茶屋一里塚 (27)笹原新田一里塚 (28)錦田一里塚
11	三島	二十八里二十七町	.

　小田原の累積距離が、20里27町、箱根が24里35町であるから、21番目の風祭から24番目の葭原久保までの４つが存在するのは正しいことがわかる。次の三島が28里27町であるから、25番目から28番目が存在するのが正しいことになる。

　すると問題は、箱根−三島間が、本当に三里二十八町あるか、という問題となる。電子地図を用いて距離を測ってみた。旧東海道が描かれていない地図であったため、大雑把であるが、たどってみると14.8kmという距離が得られた。誤差があるとは思うが一里を3.9kmとして計算してみると、3.79里。36町が一里であるから、なんと三里二十八町ということになる。大雑把に計測してみたが、ピタリと正しい距離が出てしまった。
　箱根−三島間の距離が正しいとすると、25から28の一里塚があるのも正しいことになってしまう。葭原久保一里塚がちょうど24里だとすると、先ほどの箱根宿の入口までの距離を調べると、箱根宿の累積距離になるはずである。測ってみると、0.77kmとなった。七町である。上の表の値とは大きく異なっている。
　仮にこちらの値が正しいとすると、箱根が二十四里七町であるから、三里二十八町離れた三島が二十七里三十五町となる。すると宿間には、25、26、27の３つの一里塚が存在することになる。しかし、三十六町が一里であるから、三島宿に入った直後に28里目がなければならない。

　最初、なぜ箱根山中だけ、一里塚の数が合わないのかを考えたとき、一つの仮定として、湯坂道など旧道を考えた。というのは、古い道は遠回りしており、距離がある。その距離を元に里数が求められたが後に新道ができ、距離は短くなったが、里数はそのままに計算することにしたため（箱根より先の里数をそのまま用いるため）、箱根で辻褄を合わせているのではないかと。
　しかし、調べてみると、どうやらこの仮説は崩れ、距離は正しいようである。

　荷物の運搬などの駄賃を決めるための里数だとすると、箱根のような難所では、本来の距離よりも多くの里数を表字するほうが理にかなっている。実際の間隔よりも狭く一里塚を築けば、多くの駄賃を得られるわけだ。しかし実情は逆に少なく設定されている。
　もう一つの謎として、箱根宿の位置が若干違うのが気になる。箱根宿の位置が、日本橋から二十四里三十五町のはずが、24里目の一里塚から七町ほどしか離れていない。二十八町の違いとは約3kmである。かなり違う。累積のため誤差があるとしても、小田原までの累積値と一里塚の関係を見ても、三島以降を見ても、箱根宿だけ、誤差が大きいようだ。

あらためて、葭原久保から三島間の距離を地図上で測定した結果をまとめる。
 

0.8km	箱根		14.8km					三島
葭原久保	4.5km	接待茶屋	4.4km	笹原新田	4.2km	錦田	2.5km	1.9km	三島

どうやら、この区間のみ、一里塚間の距離がすべて広く取られているらしい。この先は再び3.9km毎に一里塚が置かれている。

　結局、何もわからず謎だけが残った。次回、箱根を訪ねるのが楽しみである。

※前述の宿場間、一里塚間の距離の図が、見る環境によって非常に見難いことが判明したため書きなおしました、(2001.01.24)